News

お知らせ

TOP
/
すべてのニュース
/
お知らせ
/
未来を芽吹かせる!竹中工務店「森になる建築」とEFポリマーの共創

お知らせ

Nov 26,2025

未来を芽吹かせる!竹中工務店「森になる建築」とEFポリマーの共創

2025年大阪・関西万博で竹中工務店が挑んだ「森になる建築」。建物が役目を終えた後、廃棄物ではなく未来の森となる。その挑戦を支えたのが、100%自然由来の吸水素材・EFポリマーでした。

社内コンペから始まった「無理かもしれない挑戦」

2019年、竹中工務店は2025年大阪・関西万博での展示を念頭に置いた社内コンペを開催しました。テーマは「未来の建築とは何か」。建築技術だけでなく、社会や環境、そして人との関わりまでを含めて新しい発想を募るものでした。

その中で、若手建築家チームが提案したのが「森になる建築 」です。壊しては建てる従来のサイクルに代わり、建築そのものがいずれ朽ちて土にかえり森を生み出す——そんな構想が審査員の心を動かし、竹中工務店はこの案を、未来を示す万博という舞台で実現することを決定します。その後、この挑戦に加わったのが、竹中工務店 技術研究所の研究員・槌尾健氏でした。2011年から同研究所に所属し、都市緑化や造園、生態系保全などの分野を専門として、建築と自然の共生をテーマに研究を重ねてきた槌尾氏は、屋上緑化や壁面緑化の技術開発、さらには植物の生育環境を科学的に分析するプロジェクトにも携わり、自然の力を取り込んだ“ネイチャー・ポジティブ”な建築づくりを推進しています。スタートアップ企業との共創にも積極的で、EFポリマーのような新しい素材を建築技術にどう生かすかを実践的に探る役割を果たしてきました。

「森になる建築」で、種子の発芽環境や乾燥対策など、緑化技術面の検証を担当。「最初にこのコンセプトを聞いたとき、素晴らしいと思う一方で到底実現できないのではないかと感じました。『森になる建物』の主体となる技術のひとつが、紙に種を混ぜて躯体に貼り、植物を育てるというアイデアだったのですが、乾いた壁の上で植物が根を張るのは常識的に考えて難しい。専門家としてはそう思わざるを得なかったのです」と振り返ります。

森になる建築の外観 (写真:増田好郎)

夢洲の厳しい環境と乾燥対策への試行錯誤

構想は壮大でしたが、開発の現場には数々の苦労が待ち受けていました。特に課題となったのは、槌尾氏が懸念した通り、発芽と乾燥のリスクです。

「シーズペーパー(植物の種をすきこんだ和紙)に仕込んだ種が芽を出しても、根を伸ばす場所がなく乾燥してしまう。万博会場がある夢洲は日影も少なく夏場は酷暑にさらされます。半年間の会期で枯れ果ててしまう危険性を常に感じていました」と槌尾氏は語ります。

実際に実証実験をしてみると、予想通り水分保持が非常に重要な課題でした。日照の強い日には数時間で土が乾き、芽吹いた若芽がしおれてしまう場面もありました。散水の回数を増やし、試験区ごとに条件を調整しながら、建築を「生かす」ための工夫を続けました。森になる建築が“枯れる建築”で終わらないようにする。そのプレッシャーは相当なものでした。

竹中工務店 技術研究所 槌尾健氏

EFポリマーとの出会い——天然由来の素材が鍵に

解決の糸口となったのが、作物残渣から生まれた「EFポリマー」との出会いでした。EFポリマーはオレンジやバナナの皮など廃棄されていた作物残渣を原料にした100%自然由来の超吸水性ポリマーです。

自重の約50倍の水を吸収し、半年間にわたって吸水と放出を繰り返す。さらに約1年で完全に土に還るという特性を持っています。

「従来品の石油由来のポリマーでは、最終的に土壌でマイクロプラスチック化して環境に悪影響を与えてしまうので森になる建築では使用できません。一方EFポリマーは生分解されて完全に自然に還り、しかも水を抱える力が強い。まさにこのプロジェクトの理念・コンセプトに合致する理想的な素材でした」と槌尾氏。

導入によって、壁内部の土壌が膨らみ、シーズペーパーと密着することで、乾燥リスクが和らぎ、根が定着しやすくなるというさらなる利点も発覚。酷暑下でも発芽率を少しでも上げるために不可欠な役割を果たしたのです。

「森になる建築」外壁へのEFポリマー適用の様子

実証実験で示された「数日延命」という成果

スタートアップ企業との共創に取り組んでいた槌尾氏は社内の共創活動拠点であるCOT-Lab大手町から紹介を受けてEFポリマーの存在を把握しており、万博前には「ハニカムグリーン」と呼ばれる芝生ユニットでも実証が行われました。

ハニカムグリーンは、六角形の樹脂枠に土と芝を入れて並べることで、芝生面を簡単に形成できるユニット型の緑化システムです。都市の広場や駐車場など、芝が傷みやすい場所でも緑を保てるように設計されています。

この実証は2025年初め、茨城県かすみがうら市のビニルハウスで行われ、冬芝と夏芝をそれぞれ植えた区画にEFポリマーを混ぜ、その効果を比較。ポリマーを混ぜた区画の方が、初期生育が明らかに早く、乾燥下でも長く緑を維持できる結果が出ました。

「3日で枯れるところを4日、5日と延命させることができれば、わずか数日の違いでも、実務上での維持管理のしやすさが全く変わります」と槌尾氏は強調します。

また、事前に行われた実験検証(試作段階での効果確認)でも、気温や湿度の異なる条件下で植物の持続性を比較。冬芝では「元気な状態が2日程長く保たれた」という結果が得られ、EFポリマーが水分保持に効果をもたらすことが確認されました。

万博で示された芽吹きと来場者の評価

日陰のない万博会場という厳しい条件下にもかかわらず、「森になる建築」は、植物の芽吹きの瞬間を来場者に示すことができました。

来場者からは「ちゃんと貼った紙から芽が出ているのが見える」「思った以上に緑が育っている」という声が寄せられました。槌尾氏も「全部が枯れてしまうという残念な姿ではなく、“森の始まりが見える”と受け止めてもらえたのは大きな成果でした。建築が完成した瞬間が終わりではなく、そこから“成長していく”という新しい価値観を示すことができました」と「森になる建築」の未来を見据えています。

国内外の建築家からも注目を集め、海外メディアでも紹介されました。建築は会期終了後、竹中工務店の研修所に移設され、長期的な経過観察が行われる予定です。

「自分が定年になるころにどんな森に育っているかを見るのが楽しみです。建築の役割が、厳しい自然から人を守ために自然と人を分かつだけでなく、自然とつながる場になることを願っています」と語る姿には、挑戦をやり抜いた研究者の実感が込められていました。

EFポリマーが広げる都市緑化・砂漠化対策の可能性

槌尾氏はEFポリマーについて、単なる建築資材を超えた可能性を感じています。

「非常にシンプルで、現場でも扱いやすく、環境負荷がない。造園や都市緑化、さらには大規模な樹木移植でも役立つはずです。移植時の枯死リスクを下げたり、激甚(げきじん)化が懸念される気候変動の影響を受ける地域の緑化にも応用できる可能性がある」と期待を寄せます。

実際、槌尾氏はEFポリマーの活用範囲を「森になる建築」の枠を超えて広げたいと考えています。

「例えば街路樹の植え替えや屋上緑化など、水分管理が難しい環境で効果を発揮することが期待されます。灌水量を増やすより、EFポリマーを混ぜることにより維持管理の負担を減らせる可能性があります。特に都市部では、保水性を確保するだけで植栽の状態がぐっと安定します」と語ります。

また、仮設の緑化空間やイベント後に撤去される植栽でも、短期間で根付きを促す補助材として使えると、その即効性にも注目しています。「数ヶ月だけでも緑を生かしたい現場では、水やりの頻度を減らせるだけで大きなメリットです」。

EFポリマーは既にインドやアフリカで干ばつ地帯の農業支援に活用され、セネガルでは植林プロジェクト、ウクライナでは農地の復興支援にも役立てられています。こうした実績は、建築分野にとどまらず社会的課題の解決に寄与できる素材であることを示しています。

槌尾氏も「他のスタートアップの多様な技術と組み合わせれば相乗効果も期待できる。業界全体がよりよくなる取り組みとして広げていきたい」と語り、建築と農業、都市と自然をつなぐ“媒介”になる存在としてEFポリマーに期待しています。

建築と自然をつなぐ共創の未来へ

「森になる建築」は、竹中工務店の若手建築家の発想から始まり、社内外の多様な知見とスタートアップの技術を組み合わせて実現したプロジェクトでした。

その理念を支えたのが、100%自然由来で完全生分解性を有するEFポリマーです。自然に還りながら水を蓄え、芽吹きを支えるこの素材は、森になる建築を実現させるための大きな力となりました。

夢洲で芽吹いた小さな緑はやがて森となり、未来を生きる世代へ引き継がれていきます。その物語の中で、竹中工務店とEFポリマーの共創は確かに新しい建築の可能性を示したのです。

関連ニュース

Nov 26,2025

未来を芽吹かせる!竹中工務店「森になる建築」とEFポリマーの共創

2025年大阪・関西万博で竹中工務店が挑んだ「森になる建築」。建物が役目を終えた後、廃棄物ではなく未来の森となる。その挑戦を支えたのが、...
Nov 20,2025

地球規模の課題に、世界初の研究で挑む|R&D 名嶋凜太郎インタビュー

EFポリマーで農業分野の研究開発(R&D)を担う名嶋凜太郎さんは、実証実験の分析や営業チームの専門サポートなどを通じて、会社の技...
Nov 14,2025

投資家・パートナー向け説明会を開催

EF Polymerは、シリーズBラウンドの資金調達完了を節目としてこの度、投資家ならびにパートナーの皆さまに向けて、最新の事業進捗およ...
Oct 26,2025

CEO ナラヤン「Forbes JAPAN 30 UNDER 30 2025」に選出!

2025年8月25日、東京で開催された授賞式において、EF Polymer 創業者兼CEOのナラヤン・ラル...
Oct 26,2025

Global Startup EXPO 2025に出展しました!

EF Polymerは、2025年9月17日〜18日に開催された「Global Startup EXPO 2025」に出展しました...
Oct 26,2025

J-AGRI TOKYO に出展しました!

2025年10月1日〜3日に開催された「農業WEEK 通称:J-AGRI(ジェイアグリ)」に、EF Polymerが出展しました...
Oct 01,2025

NHK おはよう日本に紹介されました

10/1、NHKの「おはよう日本」にEFポリマーが紹介されました...
Sep 30,2025

EFポリマーがシリーズBラウンドのセカンドクローズの資金調達を完了

100%自然由来の超吸水性ポリマーの開発を手がけるEF Polymer株式会社(本社:沖縄 / 創業者兼CEO:ナラヤン・ラル・ガルジャール...
Sep 29,2025

J-AGRI TOKYOに出展します

EFポリマーは10/1から幕張で開催される、J-AGRI TOKYO(旧農業WEEK)に出展します。是非お立ち寄りください。<イベント概...
Sep 25,2025

「無限の可能性を感じた」 植物業界のパイオニアが語るEFポリマーの魅力|そら植物園インタビュー

型に捉われず、植物の可能性に挑戦し続ける「そら植物園」GSP、ところざわさくらタウン、TORAYA GINZAなど名だたる施設のランドス...
Aug 19,2025

【イベント情報】8/23 EFPolymer使用鉢植え体験@こどもの国

English followsEFポリマーはこの度、沖縄こどもの国と共同で、親子向けの環境教育ワークショップを開催します。透明カップのミ...
Aug 15,2025

From Plants to Performance: The Inside Story of Developing the EF Polymer Sheet〈EF Polymer × Soken Chemical〉

Absorbent pads are everywhere—in cosmetics and face masks, food‑tray...
以前の記事を見る